スクール生や、同業のエステティシャンの方から、時折こんな切実なご相談を受けることがあります。
美容医療が身近になった今の時代、現場に立つエステティシャンなら一度は直面する壁かもしれません。正直に言うと、私自身もこの問いに対する答えをずっと探し続けてきました。
今日は、14年サロンを続けてきた今の私なりの答えを、丁寧に言葉にしてみたいと思います。
美容医療とエステは「競合」ではなく、役割が違う
まず大前提としてお伝えしたいのは、美容医療とエステは競い合う関係ではなく、そもそも役割が違うということです。
私のサロンにも、美容医療を定期的に受けながら通ってくださっているお客様がたくさんいらっしゃいます。むしろ、美容医療を受けているからこそ、日々のサロンケアがとても大切になるのです。
例えば、クリニックでハードなピーリングを受けたとします。その効果を最大限に引き出すには、まず受ける前の肌のコンディション(土台)が整っている必要があります。土台が崩れて乾燥した状態でハードな施術を受ければ、かえって肌が荒れてしまうこともあります。
施術を受ける前に良いコンディションを作っておくこと。そして、施術後の良い状態を長くキープしていくこと。これは、日々のホームケアとサロンケアの積み重ねでしか実現できません。
エステが得意としているのは、まさにこの「土台づくり」と「維持」の部分なのです。
エステにしかできない領域は確実にある
シミひとつをとっても、実はクリニックのレーザーだけでスッキリ解決できないケースがあります。
例えば、シミの奥に肝斑が隠れているケース。レーザーで強い刺激を与えた途端、奥から肝斑が浮き出てきて、かえって黒ずみが目立ってしまうことがあります。そうした場合、リスクを抑えながら穏やかにケアをしたり、肌全体の代謝を底上げしたりすることは、むしろエステが得意とする領域です。
近年、美容医療とエステの境界線は曖昧になってきています。実際、クリニックから依頼を受けて、私がドクターや看護師の方へ「クレンジング技術」や「おもてなし」について技術指導に伺うこともあります。痛みを伴う施術が多いクリニックだからこそ、「リラックスして受けてもらうためのエステの技術を取り入れたい」というご相談です。
一方で、エステの中にも、結果重視で強い機械を使ってどんどん進めていくサロンもあります。どちらが良い悪いということではなく、それぞれのスタンスや役割の違いなのだと思います。
「結果」だけが、エステの価値ではない
エステの良さは、もちろん肌への結果を出すこと、ホームケアでは届かないスピード感を届けることにもあります。でも、それと同じくらい大切なのが、「痛みなく、心から気持ちよく受けていただくこと」です。
カウンセリングも、「肌がこうなっているから、このメニューをやりましょう」という事務的なものだけではありません。普段のライフスタイルや、睡眠環境、家族構成まで、自然と伺うことがあります。3回、4回と定期的にお会いする関係だからこそ気づけること、お伝えできる寄り添い方があるのだと思います。
そしてここで、もう一つ、私が大切にしている学術的な視点をお伝えします。
心理学者の山口創先生は、人間の皮膚にある「C触覚線維」という神経が、ゆっくりとした優しい触れ方に反応し、オキシトシン(幸福ホルモン)の分泌を促すことで、深い安心感や幸福感につながると提唱されています。
これは、機械やレーザーでは絶対に代替できない、「人の手」だからこそ生まれる作用です。
「気持ちよさ、リラクゼーション」というと、なんとなくふんわりしたもの・その場しのぎ・非科学的と捉える人もいるかもしれません。でも、人の手で触れるからこその気持ちよさが、脳神経や身体、そして心理面に及ぼす影響は、今やしっかりと医学的にも説明できるものになっています。特にストレス過多な現代社会において、無視できない絶大な効果が期待できると、私は考えています。
実際、肌がどれだけ綺麗になったとしても、「とにかくここに来て気持ちよくなりたい」「癒されたい」という理由だけで、サロンに通い続けてくださる方もたくさんいらっしゃいます。
エステにおいて結果を出すことは大事です。でも、「結果だけではない魅力」も大いにあるんです。そして、それを求めているお客様は確実にいらっしゃいます。
迷ったときに、思い出してほしいこと
もし自信がなくなりそうになったら、自分が「受ける側(お客様)」になったときの気持ちを思い出すと、意外とすぐに答えが出ます。
シミが気になったとき、あなたはサロンに行きますか?クリニックに行きますか?
どちらが正解、ということはありません。シミの形状によっては、クリニックの方が確実でコストパフォーマンスが良い場合もあります。
一方で、痛みや赤みへの不安から「穏やかなエステのケアがいい」と考える方もいます。両方をいいとこ取りする方もいれば、最初から結果重視でクリニックを選ぶ方もいます。
大切なのは、エステティシャンである私たち自身が、「エステティックの価値、リラクゼーションの価値とは何なのか」を、自分の中ではっきりと確認しておくことです。
自分がその価値を信じられていなければ、お客様に自信を持ってお伝えすることはできません。
クリニックが増えて、「お客様を取られる」「ライバルが増えた」と感じるサロンオーナーも多いと思います。でも、結果だけが価値ではないということを自分の軸として持っておけば、「クリニックの方が結果が出るから…」と、自信をなくす必要は全くありません。
お客様と、そしてお客様の心身と真面目に、丁寧に向き合っているエステティシャンが活躍できる場所は、今までも、今も、これからも確かにあります。
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