裸でベッドから引きずり下ろされた夜の話in韓国

美容家歴17年。2万人以上の肌を触ってきた。そんな私が先日、はじめて美容大国・韓国に行った。
遅い。遅すぎる。わかってる。
韓国といえばアカスリ。これは全国民の共通認識だと思う。だから行った。行ったんだけど。
まさか、足首を掴まれてベッドから引きずり下ろされるとは、思っていなかった。
個室は清潔で、落ち着いていた。最初は。

ソウル江南にある「Spa heum」。友人と高級路線を選んだのは、大衆店で素っ裸を知人に見られるリスクを回避するためだ。賢い判断だと思った。一番人気の「リアルゴールドコース」85分、約15,000円。個室、ドライヤー完備、風量バッチリ。いい出だしだった。

湯船に浸かりながらアロマの香りとドリンクをいただいて、「ああ、来てよかった。韓国、好きかも」と思っていた。フライト後の疲れた体に、ぬるめのお湯が染みた。
そこまでは、よかった。
おもむろに、脱いだ。

セラピストのお姉様が、浴室から登場した。
バスローブに着替えたばかりの私に「フク、オフ!コッチキテ!」と言って、着替えを促す。緊張とともに着て1分もたたないバスローブを脱ぐ私。そして制服を脱ぐ、セラピスト。
黒の、透け感のある、セクシーな下着姿になった。
え?
私は素っ裸。セラピストのお姉様はセクシー下着。
これは何のゲームですか?
驚いて声が出た。「えっ」って出た。声。
担当のお姉様はおそらく50代。堂々としていた。めちゃくちゃ堂々としていた。この世界に「恥ずかしい」という概念はないらしかった。私だけが恥ずかしかった。
まな板の鯉、ならぬ、まな板の私。
韓国に到着してまだ2時間。素っ裸でベッドに仰向けになりながら、「私、今何してるんだろう」と思った。
アカスリが始まった。クレンジングからスタートし、足元から首まで全身を丁寧に触られていく。「ちょっと、そんなとこまで!?」という場所も含めて。
同業者の目線でこっそり観察すると、韓国アカスリは全体的に「せっかち」だった。日本のエステなら、タオルでドレーピングしながら大切な部分をそっと隠す。そこはもう、素っ裸。ノードレーピング。全方位オープン。カルチャーショックを覚えながら、それでも肌はどんどんツルツルになっていった。
足首を掴まれた。
アカスリ後のシャワーのタイミングだった。
ベッドからシャワーまで自分で移動するのかと思っていたら、お姉様が私の足首を、掴んだ。
そのまま、引きずり下ろした。
ベッドから。床に向かって。ずるずるーーーーと。
声でた。まじで声でた。
「え!?え!?」ってやつが出た。
人生で足首を掴まれてベッドから引きずり下ろされた経験、ありますか。私はなかった。たぶんずっとなかったと思う。生まれてこのかた。
今すぐ誰かに電話したかった。「ねえ聞いて、今足首掴まれたんだけど」って言いたかった。でも裸だった。
え、柔術か何か格闘技のレッスンだっけ?いまの時間。
クライマックスは、爆音カスタネット。
施術の最後。ベッドに座るよう促されて、始まった。肩叩き。
美容室のシャンプー後みたいな、あの軽い肩叩き、を想像していた。
違った。
叩打法、強。
叩打法、長い。
叩打法、カスタネット。
え、カスタネットの音がする。静かな浴室に響き渡っている。私の肩から、カスタネットの音がしている。爆音カスタネット。
そしてそのカスタネットは、だんだんエスカレートしていった。背中まで鳴り始めた。バンバン、バンバン。もう背中は平手打ち。
これから柔道の試合に出るんですか?という気合い注入。夜の23時半、素っ裸で格闘家のような背中を作られていた。今からちょっと、オリンピックの決勝戦出てくる。ってくらいの気合い注入された。
肌がスベスベ通り越した

試合(?)が終わって、ドレッサーの前に座った。冷たい甘いドリンクを飲みながら、気がついた。
太ももが、つるつるだった。
腕が、すべすべだった。
顔も、なんかちがった。
初めての国で、知らないお姉様に素っ裸で引きずり回されて、足首を掴まれて、カスタネットにされて、最後は試合前の格闘家。それでも、いや、だからこそなのか。肌が、ちゃんとよくなっていた。
この世界には、私の知らないトリートメントがまだたくさんある。
そう思ったら、なんかちょっと、嬉しくなった。
エステティシャンとして、最後に一つだけ。

17年間、日本のエステで「丁寧に、ゆっくり、お客様に寄り添って」を大切にしてきた。それは今も変わらない。でも、あの浴室で引きずり下ろされた瞬間、「ケアの形は一つじゃない」ということを、足首ごと・・・いや、身体で教えてもらった気がした。
SUHADAのスクールでは、こんな荒っぽいことは教えない。でも、世界の美容を知っているセラピストと、知らないセラピストでは、引き出しの数がちがう。
韓国のお姉様、ありがとう。あなたの肩カスタネットは、私の骨の髄まで届きました。
まとめ
サロン情報
店名:Spa heum Private Bath & Body Scrub
住所:ソウル特別市 江南区 彦州路311 ローズ1タワー B1F 102号
施術の流れ:湯船に浸かりながらドリンク&メイク落とし→ベッドに仰向け(全身クレンジング)→ざっぱんお湯かけられる→アカスリ(仰向け、横向き、うつ伏せ、仰向け)&ざっぱんお湯かけ→シャワーでアカ流す&顔と髪を洗う→ローション的なので保湿しつつマッサージ(うつ伏せ、仰向け)→シャンプー・トリートメント的なのしつつ・顔マッサージ&パック→シャワーで流す→ベッドで保湿ローション?→最後軽くマッサージで終了→ドリンクをいただきながら着替え・ドライヤー・身支度
施術者により流れには差がありそうです。一緒に受けた友人と話がちがった笑
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執筆者

永松麻美(ながまつあさみ):東京都世田谷区(下北沢)でエステサロン&スクールSUHADAを運営してるオーナーエステティシャン・エステ講師。サロンは12年目。初心者からエステサロン開業を目指すための技術・知識スクールを運営、卒業生の開業・経営サポートにも携わっている。美容家としてTV・ラジオ・雑誌の美容記事監修・執筆、化粧品や美容アイテムの監修メディア出演もしている。著書に「シワとりパーフェクトブック」「正しい知識がわかる 美肌事典」「キレイかどうかは自分で決める」「表情筋ほぐし」がある。
2026/4/24 リライト